【検証#01】ハースト指数 — カオス理論で市場の「記憶」を読む¶

この記事の3行まとめ
- 🌀 カオス理論に基づく指標で、相場の「ランダム性」と「持続性」を判別
- 📊 0.5を基準に、トレンド(>0.5)か平均回帰(<0.5)かが分かる
- 🐍 Python不要!MQL5単体で高度なR/S分析を完全実装
はじめに:なぜ「歪み」を探すのか?¶
前回のコラム「トレンド相場 vs レンジ相場:江戸の米相場に学ぶ相場の真髄」では、「相場のトレンドとレンジを事前完全に見分けることは不可能である」という、ある種絶望的な結論に至りました。
しかし、我々トレーダーはそこで諦めるわけにはいきません。「完全に予測する」ことはできなくても、「ランダムウォークの中に生じる、わずかな確率の歪み(エッジ)」を見つけ出すことはできるはずです。
そのための「検証シリーズ」第一弾として、今回はカオス理論の世界から「ハースト指数 (Hurst Exponent)」を召喚します。
0.5 の意味¶
この指標は 0.0 〜 1.0 の値を取ります。
| 値 (\(H\)) | 意味 | 相場の状態 | 戦略 |
|---|---|---|---|
| 0.5 近辺 | ランダムウォーク | ノイズ、方向感なし | 手を出さない |
| 0.5 より大きい | 持続性 (Persistent) | 上がればさらに上がる (トレンド) | 順張り (Trend Follow) |
| 0.5 より小さい | 反持続性 (Mean Reverting) | 上がれば次は下がる (レンジ) | 逆張り (Mean Reversion) |
多くの相場(特にFXの短期足)は、実は 0.5(ランダム) に近い動きをしています。しかし、時折 \(H > 0.6\) のような強いトレンド状態や、\(H < 0.4\) のような強烈なレンジ状態が発生します。ここを狙うのがカオス理論トレードの醍醐味です。
MQL5による実装 (R/S分析)¶
通常、この計算にはPythonなどの科学計算ライブラリが使われますが、今回はMQL5だけでR/S分析 (Rescaled Range Analysis) を実装しました。
ダウンロード¶
Column_Hurst_Exponent.mq5 をダウンロード
ラインの色の意味¶
| 色 | 意味 | 閾値 |
|---|---|---|
| 赤色 (Red) | トレンド相場 (持続性あり) | \(H > 0.55\) |
| 青色 (Blue) | レンジ相場 (平均回帰性あり) | \(H < 0.45\) |
| 灰色 (Gray) | ランダムウォーク (ノイズ) | その他 |
パラメータ設定¶
- InpPeriod (計算期間): デフォルトは
100です。R/S分析の性質上、少なくとも50以上のサンプル数がないと信頼性が落ちます。 - InpPrice (適用価格): Close, Open, High, Low などから選択可能です。
検証結果:本当に効くのか?¶
実際のチャート(USDJPY 1時間足など)に適用してみると、以下のような特徴が見られます。
- 強いトレンドの初動: 価格が動意づくと、ハースト指数が
0.5を超えて急上昇します。 - レンジ相場: ボックス圏では、指数は
0.4付近を推移します。この時、移動平均線はゴールデンクロス/デッドクロスを繰り返して騙しが発生しますが、ハースト指数を見れば「今はトレンドがない」と判断できます。
まとめ¶
「移動平均線が効かない」「ブレイクアウトが騙しになる」...それは、相場の次元(性質) が変わっているからです。
ハースト指数をフィルターとして使うことで、「そもそも勝負すべき相場なのか?」を客観的に判断できるようになります。ぜひこれを使って、あなたのEAや裁量トレードの精度を向上させてください。
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