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【検証#05】市場の「磁力線」を数学で炙り出す — Dynamic Magnet Trend System (DMTS) の全貌

相場は常にランダムに動いているように見えて、実は「帰るべき場所」を持っています。

価格が大きく動いた後、なぜか特定の価格帯に何度も吸い寄せられるように戻ってくる現象を見たことがないでしょうか? それは市場参加者の多くが無意識(あるいは意図的)に意識している「磁力線(Magnet Line)」が存在するからです。

通常、こうした節目を見つけるために私たちは一生懸命チャートに水平線やトレンドラインを手で引きますよね。でも、「もしこの見えない磁力線を、数学と統計の力で全自動で炙り出せたら面白くないか?」 と思い立ちました。

本記事では、相場の適正価格(磁場)を複数の理系アプローチで動的(Dynamic)に算出し、相場の状態に応じて「回帰(逆張り)」から「トレンド(順張り)」へとカメレオンのように戦略を切り替える異端のシステム、Dynamic Magnet Trend System (DMTS) の全貌と、その奥に潜む「変態的コアロジック」を公開します。

DMTSインジケータ: 青=Dynamic POC(Anchored VWAP)、赤=Math Equilibrium(Ornstein-Uhlenbeck)

この記事の3行まとめ

  1. 手描きのラインは捨てろ! Anchored VWAP で「その日の真の平均(大口の原価)」を可視化。
  2. 第2の磁力線を「ガウス回帰」「確率微分方程式」「フラクタル理論」の3つの変態ロジックから選択可能。
  3. ラインの成熟度(LL)をカウントし、育ち切った磁力線をブレイクしたら「順張りモード」へ自動移行。

🧭 コア概念:2本の「動的」磁力線

DMTSの心臓部は、過去の固定されたサポレジラインではなく、常に現在進行形で計算され続ける2つの「動的POC(Point of Control)」にあります。

① メイン磁力線:Dynamic POC (Anchored VWAP Proxy)

市場の意識は1日の中でリセットされ、変化します。そのため、DMTSのメインラインには単純な移動平均線ではなく、「Tick Volume」による出来高加重「1日の起点(00:00)」を組み合わせた独自の Anchored VWAP (日次アンカーVWAP) を採用しました。

計算式(概念)は以下の通りです。

\[ \text{Dynamic POC} = \frac{\sum (\text{Typical Price} \times \text{Tick Volume})}{\sum \text{Tick Volume}} \quad (\text{当日00:00から現在まで}) \]

これは単なる価格の平均ではありません。「今日1日の中で、どこで一番取引が活発だったか(大口の資金がどこに滞留しているか)」を示す、その日の重力の中心です。このラインこそが、相場が1日のうちに何度も引き戻される最強の磁場となります。

② サブ磁力線:選べる3つの「変態数学ロジック (Math Equilibrium)」

DMTSが本当に狂っている(面白い)のはここからです。 メインのVWAPだけでは拾いきれない相場の「歪み」や「別の次元の均衡点」を見つけるため、インジケータのパラメータ InpMathLineType から以下の3つのガチ理系アプローチを選択できるようにしました。

1. MATH_NW (Nadaraya-Watson / ガウス回帰)

カーネル回帰推定量(Nadaraya-Watson推定量)を用いて、過去の価格データに非線形の滑らかな曲線をフィッティングさせます。 距離に応じたガウス分布(正規分布)の重み付けを行うため、直近のノイズを美しく平滑化し、「統計的に最も妥当な中心線」を導き出します。滑らかすぎて見とれてしまうレベルです。

2. MATH_OU (Ornstein-Uhlenbeck / 確率微分方程式)

ここが一番の推しポイントです。金融工学の金利モデル(Vasicekモデル等)で使われる「オルンシュタイン=ウーレンベック過程」を応用しています。 「相場はランダムウォークしながらも、長期的な平均(均衡点)に引き戻される力(Mean Reversion)が働く」という物理法則のような前提に立ち、直近の価格推移から「未知の均衡点 \(\mu\)」を最小二乗法で逆算してプロットします。「相場が本来帰りたがっている場所」を数式が教えてくれるロジックです。

3. MATH_FWAP (Fractal-Weighted / フラクタル適応型)

カウフマンの適応型移動平均(KAMA)の「効率比(ER)」の概念を応用しています。 相場が一直線に動いている(ノイズが少ない)時はラインが価格にピタッと追従し、レンジ相場でギザギザ動いている(フラクタル次元が高い)時はラインが水平になって「横ばいの磁場」を形成します。相場のボラティリティに応じて自己進化するスライムのようなラインです。


📈 ラインレベル(LL)の蓄積と信頼判定

いくら高度な計算でラインを引いても、それが「強力な磁場」なのか「誰も気にしていないただの実線」なのか判断できません。そこで、ラインの信頼度を数値化した Line Level(LL) という概念を導入しました。

LLは以下の「サイクル」を完了するごとに加算(レベルアップ)されていきます。

  1. 乖離: 価格が磁力線から \(X\) pips 以上離れる(ゴムが引かれる)。
  2. 回帰: その後、再び磁力線の \(Y\) pips 以内に戻ってくる(ゴムが戻る)。
  3. 判定: これを1サイクルとし、LL = LL + 1 としてラインのエネルギーを蓄積します。

何度も跳ね返されたり、周囲をウロウロされたラインほど「レベルが高い(=市場に強く意識されている)」とプログラムが認識します。


⚙️ カメレオン戦略:相場フェーズの自動判定とモード切替

蓄積された「LL(成熟度)」と、トレンドの強さを示す「ADX」を組み合わせることで、DMTSは現在の相場フェーズを自動判定し、戦い方をガラリと変えます。

相場フェーズ 判定条件 戦略(戦い方)
Magnet(回帰) LL < 閾値 かつ ADX < 20 ラインへの「吸い寄せ」を狙った逆張り
Wait(待機) LL ≥ 閾値 かつ ADX が停滞 ブレイクアウト前のエネルギー充填中につき静観
Trend(推進) LL ≥ 閾値 かつ ADX > 25 (+BBブレイク等) よく育ったラインを「背」にした順張り(押し目・戻り売り)

独自の損切り計算「対数減衰 Deep SL」

特に Trend モード(順張り)への移行時、「何度も機能した強力なライン(高LL)ほど、一瞬だけブレイクして戻るダマシ(ストップ狩り)が発生しやすい」という相場の意地悪な性質に対応するため、DMTSは独自の損切り(SL)計算式を持ちます。

\[ SL = \text{Line\_Price} \pm \left( ATR(14) \times \text{Multiplier} \times \log_{10}(LL) \right) \]

ラインのレベル(LL)が高いほど、ATRベースの基本損切り幅に対して \(\log_{10}\) で広がりを持たせます。「強いラインの時は、狩られにくいように損切りをあえて深く(広く)取る」という相場心理の数式化に挑戦してみました。


🎛️ 主要パラメータ (Inputs)

インジケータ Ind_DMTS_v100.mq5 では、以下のパラメータでこの変態空間をチューニングできます。

パラメータ名 デフォルト(推奨値) 説明
InpMathLineType MATH_OU 第2磁力線のロジック選択 (NW / OU / FWAP)
InpPeriod 50 計算期間
InpParam 0.5 バンド幅や影響度を決める係数

ダウンロードしてチャートに入れた際、まずは MATH_OU (オルンシュタイン=ウーレンベック) の動きのキモさ(価格の先回りをして「ここが中心だぞ」と指し示す感覚)を味わってみてください。

Ind_DMTS_v100.mq5 をダウンロード


🔮 今後の拡張性とEA化への展望

この「Dynamic Magnet Trend System」は、インジケータとしての可視化は完了していますが、EA(自動売買ロジック)としては現在プロトタイプの段階です。

今後は、2つの強力な磁力線のクロスオーバーや、Tick Volumeのボラティリティフィルターを組み込み、「完全に数学任せで相場の波を乗りこなせるか?」という実験に進んでいきたいと思います。

ただ手で線を引くのをやめて、数式に相場の重力場を計算させてみる。この知的な遊び、皆さんも一緒に検証してみませんか?


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