【検証#19】残高0円 ― 「いつか破綻する」前提で回していたマーチンEAが、介入の夜に破綻するまでの65分¶

この記事の4行まとめ
- 2026年7月31日 02時03分(日本時間)、ドル円の急落でリアル口座のマーチンゲールEAが4本のポジションを一括決済しました。損失 -74,495円、残高 0円。クレジット5万円のうち 48,712円 が消えました。
- 死因は設計通りでした。EAは自前の「維持率30%で全部閉じる」ブレーカーを、業者の強制ロスカット(20%)の手前できちんと作動させています。損切りは壊れていません。
- 生涯出金額は 0円。ただしこれは配管の不具合ではなく、採算の問題でした。海外口座の出金は1回約2,500円の固定費に加え、出金額の割合ぶんボーナスクレジットが消えます。この口座で1万円抜くと、手取り7,500円のために耐久力を18,243円削る(効率41%)。抜く資金と耐える資金が同じ財布だった——クレジットは今回、損失の65%を吸収しています。
- 別ラインで使っている「感覚器」(市場ストレス監視)に当時のデータをそのまま流し込むと、4本目のナンピンに「撃つな(SKIP)」を出していました。ただし実データで再生すると、「待たせるだけ」では同じように死にます。生死を分けたのはタイミングではなくロットの大きさでした。
この記事の前提
特定の業者・特定の通貨ペア(ドル円)・特定の口座での実測記録です。金額はすべて実際の約定履歴から取っています。投資助言ではありません。マーチンゲールは破綻確率の高い手法であり、この記事はその破綻の実例として書いています。
はじめに ― これは「予定されていた事故」の報告書です¶
最初に、言い訳にならないように順番を整理しておきます。
このEAはマーチンゲール(ナンピン倍賭け)です。いつか必ず破綻する。それは分かっていました。分かった上で回していたのは、こういう構造を想定していたからです。
破綻するまでの間に出た利益を、少しずつ口座の外へ逃がしておく。 最後に口座がゼロになっても、逃がした分だけが手元に残る。
賭けとしては筋が通っています。破綻は「もしも」ではなく「いつ」なので、破綻までに抜いた累計 > 入金額 になれば勝ち。ならなければ負け。それだけの話です。
2026年7月31日未明、破綻の側が先に来ました。そして台帳を開いて分かったのは、逃がした金額が0円だったということです。
以下、約定履歴・1分足・監視ログを突き合わせた記録を、都合の悪いところも含めて全部書きます。
1. その夜に何が起きたか¶
1-1. 相場の側¶
2026年7月30日から31日にかけて、ドル円は 163.7円台から157.95円 まで、1日で約 575pips 下げました。政府・日銀による円買い介入との観測が報じられています。日銀の金融政策決定会合が7月30〜31日に開かれる最中の急落でした。
自前の市場ストレス監視(FISM)が自動生成したイベント件数を並べると、異常さがはっきり出ます。
| 日付 | 自動検出されたスパイクイベント数 |
|---|---|
| 7月29日 | 38件 |
| 7月30日 | 214件 |
下げは1回ではなく3波に分かれていました(日本時間)。
| 波 | 時刻(JST) | 内容 |
|---|---|---|
| 第1波 | 22:11 〜 22:34 | 163.3 → 162.3(約100pips) |
| 第2波 | 01:36 〜 02:54 | 162.9 → 157.95(約500pips) ← ここで死にました |
| 第3波 | 05:37 〜 05:54 | 159.8 → 158.5 |
第2波のピーク、01時43分の1分足の中身がこれです。
| 指標 | 直前60分の平均 | イベント時 |
|---|---|---|
| 5分リターン | — | -219.7pips |
| スプレッド平均 | 0.0012 | 0.0086(約7倍) |
| スプレッド最大 | 0.0058 | 0.0630(6.3pips) |
| 1分あたりtick数 | 228 | 500 |
| 市場反応スコア | 30.6 | 87〜100 |
直前5分のスプレッド最大は 0.108(10.8pips) まで開いています。利確目標が15〜30pipsのEAにとって、入口だけで目標の3分の1を持っていかれる世界です。
1-2. EAの側 ― 65分の記録¶
動いていたのはアリゲーター+マーチンゲールのEA(v9)です。基本ロット0.05、最大4段、倍率1.5倍、ナンピン幅は20pips→40pips→80pipsと倍々に広がる設定でした。
日本時間で並べます。
| 時刻(JST) | 動作 | ロット | 約定価格 | 前段からの逆行 |
|---|---|---|---|---|
| 00:59:00 | L1 買い | 0.03 | 162.961 | — |
| 01:25:19 | L2 買い増し | 0.05 | 162.763 | -19.8pips |
| 01:36:08 | L3 買い増し | 0.08 | 162.230 | -53.3pips |
| 01:38:00 | L4 買い増し | 0.12 | 161.418 | -81.2pips |
| 02:03:50 | 4本まとめて決済 | 0.28 | 159.391〜159.395 | -266.1pips |
決済の内訳は -24,276円 / -22,664円 / -16,845円 / -10,710円、合計 -74,495円。
L1からL4まで39分、L4から全決済まで25分50秒。全部で 65分 でした。
ロットが0.03から始まっている理由
基本ロットは0.05に設定していましたが、実際のL1は0.03です。これはEAに入れてある「リスク予算スケーリング」が効いた結果でした。残高25,783円+クレジット50,000円を想定元本100,000円で割った 0.758倍 がロットに掛かり、0.05 × 0.758 = 0.0379 を0.01刻みで切り捨てて0.03。以降は1.5倍ずつ(0.0568→0.05、0.0853→0.08、0.1279→0.12)。 この機能は正常に動いていました。ロットを24%絞っています。後で効いてきます。
1-3. 死因は「業者の強制ロスカット」ではありません¶
ここは正確に書いておきたいところです。
全決済がかかった瞬間の証拠金維持率を計算すると 約28.4% でした。この業者の強制ロスカット水準は 20%。つまり業者に切られたのではありません。
EAには自分で設定した安全装置が入っています。
EAは、設計通りに、業者より先に、自分でブレーカーを落としました。
しかもその判断は結果的に正しかった。決済価格は159.394でしたが、価格はその後さらに下げ、02時22分に157.954まで落ちています。決済しなかった場合、さらに144pips分の含み損を抱えていました。0.28ロットなら追加で約40,000円です。クレジットを食い尽くして、業者側のゼロカットに突っ込んでいたはずです。
損切りは、正しく、設計通りに作動した。これが今回いちばん誤解されたくない点です。壊れていたのは別の場所でした。
2. 台帳を開く ― 生涯出金額 0円¶
口座の全履歴を集計しました。2026年2月20日の入金から、7月31日の破綻までの全部です。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 入金(現金) | 50,000円 |
| ボーナスクレジット(100%) | 50,000円 |
| 出金合計 | 0円 |
| 残高ピーク | 63,480円(5月14日) |
| 最終残高 / クレジット残 | 0円 / 1,288円 |
| 決済回数 | 46回 |
| 勝率 | 67.4%(31勝15敗) |
| 総利益 / 総損失 | 43,769円 / 142,481円 |
| プロフィットファクター | 0.31 |
| 累計スワップ | -24,580円 |
月次で見ると、構造がそのまま出ます。
| 月 | トレード損益 |
|---|---|
| 2026年4月 | +5,290円 |
| 2026年5月 | +8,190円 |
| 2026年6月 | -47,852円 |
| 2026年7月 | -64,340円 |
勝率67.4%でPF 0.31。これがマーチンゲールの成績表です。小さく何度も勝ち、たまに全部返す。教科書通りすぎて、むしろ実測できたことに価値があります。
そして残高曲線を追うと、今回が2回目だったことが分かります。
| 時期 | 出来事 | 残高 |
|---|---|---|
| 2/20 | 入金 | 50,000円 |
| 4月〜5/14 | 13回の小さな勝ちを積む | 63,480円(ピーク) |
| 6/02 | 1回目のバスケット崩壊(-63,373円) | 107円 |
| 6/08〜7/30 | 20回かけて地道に積み直す | 25,783円 |
| 7/31 02:03 | 2回目のバスケット崩壊(-74,495円) | 0円 |
6月2日に107円まで削られ、そこから約2ヶ月かけて25,783円まで戻し、また全部返しました。同じ機構で、3ヶ月に2回です。
2-1. なぜ0円だったのか ― 「抜かなかった」のではなく「抜けなかった」¶
ここが、この記事でいちばん書くのが難しかったところです。
最初に台帳を見たとき、私は「出金する仕組みを作り忘れていた」と考えました。実際EAの中を開くと、それらしい設定はあります。
そして中身は、Print("[出金推奨] ...") でログを出し、内部変数を増やすだけ。口座から資金を動かす処理はありません。しかも条件式は 残高 ≧ 100,000 + 10,000 で、実際に入れた現金は5万円。残高11万円に到達するには入金の120%を稼ぐ必要があり、残高ピークは63,480円。一度も条件を満たしていません。
「バグだ、直せばいい」——最初はそう書こうとしました。
でも、これは違います。
2-2. 2ヶ月前に、この作戦は一度否定されている¶
過去の検証記事を読み返して、思い出しました。「1万円ごとに抜く」という作戦は、すでに一度、成立しないと結論が出ていました。
しかもその記事の日付は 2026年6月4日。1回目のバスケット崩壊(6月2日、残高107円)の 2日後 に書いたものです(【検証#14】ボーナスとマーチンとスワップ)。前回の破綻を受けて「ここをこう直す」とまとめた、その記事でした。
理由は2つあります。
壁1:出金の固定費。国内銀行送金の場合、出金額が40万円未満だと 1回あたり約2,500円 がユーザー負担になります(40万円以上ならXM側負担で実質無料)。1万円抜いて2,500円取られれば、利益の4分の1が手数料です。
壁2:ボーナスが比例して消える。こちらが本命でした。クレジットが残っている口座から出金すると、出金額の割合に応じてボーナスも一緒に消えます。
「現金だけ抜いてボーナスは温存」は、仕組み上できません。
この2点が分かった時点で、方針は「1万円ごと」から「ある程度まとまってから(10万円ごと)」に切り替えていました。EAの設定値だけが、切り替え前の「1万円ごと」のまま取り残されていたわけです。
つまり時系列はこうなります。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 6月2日 | 1回目の破綻(-63,373円 → 残高107円) |
| 6月4日 | 検証記事で「1万円ごとは不成立。10万円ごとに切り替える」と結論 |
| 6月〜7月 | 残高107円 → 25,783円まで積み直す(10万円には遠く届かない) |
| 7月31日 | 2回目の破綻(-74,495円 → 残高0円)。出金は0回 |
前回の破綻を反省して立てた新方針が、次の破綻までに一度も発動条件に届かなかった。これが実際に起きたことです。
2-3. 数字を入れると、もっと厳しい¶
では、5月11日のピーク(残高60,659円 / クレジット50,000円)で1万円抜いていたら、実際にどうなっていたか。上の式に入れます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出金額 | 10,000円 |
| 出金手数料 | -2,500円 |
| 手元に残る現金 | 7,500円 |
| 減る残高 | -10,000円 |
| 比例して消えるクレジット(16.49%) | -8,243円 |
| 失う有効証拠金(=耐久力) | -18,243円 |
手取り7,500円のために、耐久力を18,243円削る。抜き取り効率41%。
しかもこの「耐久力」は飾りではありませんでした。7月31日の破綻で、クレジットは損失74,495円のうち48,712円、つまり65%を吸収しています。残高25,783円だけでは、あの下げの半分も耐えられていません。
つまり、こういう構造です。
抜く資金と、耐える資金が、同じ財布だった。 抜けば手数料とボーナスを失い、耐久力が減って破綻が早まる。 抜かなければ、破綻したときに全部持っていかれる。
「破綻前に利益を逃がす」という私の賭けは、そもそも二律背反を内蔵していたわけです。
2-4. どの出金単位なら成立したのか ― 答え:どれも成立しない¶
では単位を変えれば解けるのか。入金5万円の口座で、3つの方針を並べます。
| 方針 | 発火に必要な残高 | 入金比 | 実際に届いたか | 経済性 |
|---|---|---|---|---|
| 1万円ごと(EAの設定値) | 60,000円 | 1.2倍 | 1回だけ到達(5/11) | 効率41% |
| 10万円ごと(切り替え後の方針) | 150,000円 | 3.0倍 | 未到達 | 手数料2.5%は許容 |
| 40万円貯めて手数料無料 | 400,000円 | 8.0倍 | 未到達 | 手数料0% |
残高ピークは63,480円、入金比 1.27倍(利益13,480円 = +27%)でした。
- 1万円ごとは届いたけれど、効率41%で、抜くほど破綻が近づく
- 10万円ごとは入金の3倍が必要で、届かなかった
- 手数料無料ラインは入金の8倍。5万円口座で40万円を目指すのは、もはや別の話です
「いつ抜くか」に、正解の選択肢が存在しませんでした。
出金コストには 2,500円という固定費 があります。固定費は口座が小さいほど重くのしかかる。5万円の口座に対して、無料ラインは40万円。この構造は戦略の巧拙ではなく、口座サイズの関数です。
私は5ヶ月間「いつ抜くか」を考えていました。正しい問いは 「この器で、そもそも抜けるのか」 でした。
2-5. 結局、コードのバグは何を隠していたのか¶
そう考えると、2-1で見たEAの「到達不能な条件式」の意味も変わります。
あれは損害を出したバグではありません。仮に条件式が正しく、5月11日に「[出金推奨]」というログが出ていたとしても、私はおそらく実行しなかったはずです。効率41%だと分かっていたからです。
このバグが本当に隠していたのは、こちらでした。
EAの中では、すでに否定された作戦が、まだ生きているふりをしていた。
「利益抜き取りシミュレーション」という機能名と WithdrawUnit = 10000 という設定値が、「破綻前に利益を逃がす構造がこの口座にはある」という感覚を私に与え続けていました。条件式が一度も真にならなかったので、その齟齬が表面化することもありませんでした。
そして皮肉なことに、対になる機能——実際の出金履歴を読んでロットを絞る仕組み——は正しく動いていました。実出金0円なので (25,783 + 50,000 - 0) / 100,000 = 0.758 を返し、ロットを24%絞っています。1-2節の「0.05のはずが0.03」の正体です。
出金を読んでリスクを減らす側は、実装され、正常に動作していた。 出金を発生させる側は、採算が合わないまま、設定値だけが残っていた。
「破綻までに抜いた累計 > 入金額」で勝ち、というルールでこの5ヶ月を採点すると 0円 vs 50,000円。完敗です。ただしその敗因は怠慢ではなく、この器では最初から勝ち筋が引かれていなかったということでした。
3. たられば ―「感覚器」を繋いでいたら¶
私は別のラインで、「感覚器」と呼んでいる仕組みを使っています。市場ストレス監視(FISM)が1分ごとに出す3つのスコア(通信リスク・市場反応・情報ショック)と、そこから決まる状態(通常/監視強化/相場急変注意/イベント相場/取引禁止)を読み、仮説に確信度とロット倍率を返すスコアラです。
このEAには繋がっていませんでした。別ラインの部品で、MQL5側からは一切参照していません。
では、繋がっていたらどうなったか。当時の監視データを保存してあるので、実際のスコアラのコードに、その瞬間のスコアをそのまま流し込んで再生しました。「その時刻より後のデータは一切使わない」ように、各エントリー時刻以前の最新行だけを渡しています。
3-1. 感覚器は何と言っていたか¶
| 時刻(JST) | その時点の市場ストレス状態 | 確信度 | 判定 | ロット |
|---|---|---|---|---|
| 00:59 L1 | 通常(24時間スパイク31件) | 0.450 | CAUTION | 0.5倍 |
| 01:25 L2 | 通常(32件) | 0.450 | CAUTION | 0.5倍 |
| 01:36 L3 | 通常(32件) | 0.450 | CAUTION | 0.5倍 |
| 01:38 L4 | 相場急変注意(36件) | 0.370 | SKIP | 0(撃たない) |
読み取れることが2つあります。
1つ目:L4は撃たれませんでした。01時36分36秒に市場ストレスが「相場急変注意」に切り替わり、確信度がSKIP境界(0.40)を割ります。L4のエントリーは01時38分00秒。84秒前に警告が出ていた計算です。
2つ目:警告は最初から出ていました。L1の時点で判定はすでに CAUTION(半分のロットにしろ) です。理由は「相場の急変」ではなく、24時間のスパイク検出が31件たまっていたから。この日は朝からずっと荒れていて、感覚器は「嵐の中で逆張りするな」と言い続けていたことになります。全決済の64分前からです。
L3は28秒差で通過しています
L3のエントリーは01:36:08。市場ストレスが「相場急変注意」に変わったのは01:36:36。28秒遅い。感覚器はL3を止められませんでした。1分間隔の監視には、こういう取りこぼしが構造的に残ります。
3-2. 実データで再生する ― 生き残ったのか¶
判定が出るだけでは意味がないので、実際の1分足で最後まで走らせました。
条件は次の通りです。約定価格は実際に約定した値に固定し、ロットだけを変えます。各1分足の安値で維持率を評価し、30%を割ったら全決済。クレジット5万円は有効証拠金に算入します。
| シナリオ | 建玉 | 平均建値 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 実際(感覚器なし) | 0.03/0.05/0.08/0.12 = 0.28 | 162.055 | 02:03に全決済 -74,495円 → 残高0円 |
| A: 0.5倍+L4なし(切り捨て) | 0.01/0.02/0.04 = 0.07 | 162.487 | 生存。最悪維持率3,984% |
| B: 0.5倍+L4なし(四捨五入) | 0.02/0.03/0.04 = 0.09 | 162.570 | 生存。最悪維持率2,408% |
| C: 減サイズなし・L4だけ止める | 0.03/0.05/0.08 = 0.16 | 162.534 | 生存。ただし最悪維持率 99% |
| D: 0.5倍+L4を26分「延期」 | 0.01/0.02/0.04/0.06 = 0.13 | 160.983 | 生存。最悪維持率1,773% |
| E: 減サイズなし・L4を26分「延期」だけ | 0.03/0.05/0.08/0.12 = 0.28 | 161.117 | 02:17に全決済 -76,662円 → 残高0円 |
ここから出てくる結論が、正直いちばん面白いところでした。
結論1:止めるだけでは死にます。
シナリオEを見てください。L4を「禁止」ではなく「相場が落ち着くまで延期」にして、ゲートが開いた02時04分(159.228)でフルロットで撃つと、14分遅れて同じように全決済されます。損失はむしろ悪化して-76,662円。平均建値は162.055→161.117と1円近く改善しているのに、死にます。
結論2:効いたのはロットです。
生き残った A / B / D はすべて ロットを半分にしたシナリオです。逆に、ロットを触らなかった C と E のうち、E は死に、C は紙一重でした。
Cの全決済ラインを計算すると 157.845。その夜の安値は 157.954。
差は10.9pips。
「4本目を止める」だけでは、10.9pipsのところで運任せだったということです。タイミングを制御しても、サイズを制御しなければ助からない。これが実データから出た答えでした。
3-3. ただし、生き残った側も勝ってはいません¶
ここを飛ばすと嘘になるので書きます。
生き残ったシナリオは、いま現在もポジションを抱えたままです。この記事を書いている7月31日午前の時点でドル円は159円台半ば。シナリオAは 0.07ロットを平均162.487で保有、含み損は約-2.4万円。シナリオBは-3.2万円、Cは-5.7万円です。
しかもこの日(7月31日)は日銀の金融政策決定会合の結果が出ます。
つまり感覚器が買ったのは勝ちではなく時間です。「口座がゼロになる」を「まだ決着していない」に変えただけ。それを勝利と呼ぶつもりはありません。
この再生で見ていないもの
バスケット利確(平均建値+15〜30pips)への到達、スワップの発生、決済時のスプレッド拡大とスリッページ、L1〜L3のロットが変われば発動タイミングもずれる効果。いずれも未考慮です。方向性の検証であって、精密な損益予測ではありません。
3-4. 感覚器の側にも欠陥が見つかりました¶
再生していて、感覚器そのものの問題にも気づきました。
この監視システムの最上位状態は「取引禁止」で、そのメッセージはこうです。
通信またはtick状態が危険。新規エントリー、ナンピン、マーチンゲールは禁止。
まさに今回のための言葉です。ところが、この状態になる条件を読むと——
発動条件が通信スコアだけなのです。市場がどれだけ壊れていても、回線が正常なら「取引禁止」にはなりません。実際、7月18日〜26日に「取引禁止」が何度も出ていますが、すべて通信スコア85によるもので、市場反応スコアは0でした。
市場側から上げられる上限は「相場急変注意」で、その上の「イベント相場」には 市場反応70以上 かつ 情報ショック60以上 が必要です。01時38分の時点で情報ショックは 40。ニュース記事の集計が実際の値動きに追いついていませんでした。
今年最大級の為替イベントの最中に、この監視システムは構造上レベル2までしか上がれなかった。インフラ監視として設計したものを市場イベントの検知にも使っていたので、市場だけで最上位まで上がる経路が存在していません。ここは直すべき欠陥です。
4. これからどうするか¶
ここまでの事実を並べたうえで、次をどうするかを書きます。
4-1. まず認めること¶
5ヶ月の実測は、こう言っています。
- 勝率67.4%、PF 0.31。期待値はマイナスでした。
- 3ヶ月で2回、同じ機構で全損しました(6月2日、7月31日)。
- 累計スワップ -24,580円 は総損失の17%。ナンピンは「持つ」戦略なので、コストが時間に比例して積まれます。
- そして抜いた利益は0円。しかもそれは、抜こうとしても採算が合わなかったからでした。
「破綻前提で利益を抜く」は、私が思っていたような戦略ではありませんでした。それは口座サイズと出金コストによって決まる、採算の問題です。5万円の器に対して固定費2,500円・無料ライン40万円という条件では、抜く回数も抜く金額も、最初から存在していませんでした。
負けたというより、参加できる土俵ではなかったというのが正確です。
4-2. 分岐は「器を変える」か「抜くのをやめる」か¶
この二律背反——抜けば耐久力が減り、抜かなければ全部失う——は、EAの改良では解けません。解けるとしたら、器の側です。選択肢を並べます。
選択肢A:ボーナス比例消失のない器に移す。
ボーナスクレジットが無ければ、「抜く=耐久力を比例で削る」という関係が消え、残るのは固定費だけになります。ただしクレジットは今回、損失の65%を吸収した本体でもあります。耐久力を捨てて出金自由度を取るトレードオフで、しかも国内業者ならゼロカットが無く追証リスクが乗ります。マーチンとの相性は悪い。
選択肢B:口座サイズを上げて手数料無料ラインに乗せる。
40万円以上なら手数料は消えます。ただし比例消失は残りますし、なによりマーチンの一撃の絶対額が8倍になります。今回の-74,495円が-60万円になる、という話です。本末転倒だと考えています。
選択肢C:抜くのをやめ、クレジットを使い切る前提に振り切る。
これは賭けとしては純粋です。ただし成立条件は「期待値がプラスであること」。実測PF 0.31では成立しません。
現時点の私の判断は、どれでもありません。先に決着させるべきことがあるからです。
4-3. 先にやること ― 抜き取りコスト込みのバックテスト¶
これまで私は、抜き取りを損益シミュレーションの外で考えていました。「利益が出る」と「利益を手元に残す」を別々に扱っていたわけです。今回わかったのは、この2つは同じリソースを奪い合うということでした。
なので次にやるのは、抜き取りを損益モデルの中に入れたバックテストです。具体的には、次を全部モデルに入れます。
- 出金の固定費(1回2,500円)
- ボーナス比例消失(出金額 ÷ 残高 × 保有クレジット)
- 出金によって耐久力が減り、全決済ラインが手前に来る効果
- 出金単位そのもの(1万 / 10万 / 40万)を探索変数にする
そのうえで判定したい問いは1つです。
「破綻間隔 × 蓄積速度 × 抜き取りコスト」が成立する設定は、存在するのか。
存在しなければ、「破綻前提で利益を抜くマーチン」はここで終わりです。それが実測に基づく結論なら、受け入れます。今回の5ヶ月・46トレードのデータは、そのバックテストを検証するための実測基準として使えます。
4-4. これとは独立に進めること¶
上の結論がどちらに転んでも、やる価値があるものが3つあります。
1:感覚器をEAに繋ぐ。3-2で単体最強だったのがロットのスケーリングでした。CAUTIONなら半分、SKIPならナンピン停止。新しいロジックではなく、既存の部品を配線するだけです。マーチン固有ではなく、どのEAにも効きます。
2:感覚器の市場経路を直す。3-4の欠陥、「市場だけでは最上位に上がれない」構造の修正です。今回のデータがそのまま回帰テストになります。
3:スワップを損益計算に最初から入れる。総損失の17%が金利コストでした。「20pips取れれば勝ち」の設計に、日数比例のコストが乗っています。
4-5. この口座について¶
再入金はせず、記録として閉じます。
5ヶ月・46トレードの完全な実測データと、「この器では抜けない」という構造の発見が、この口座の成果です。50,000円で買ったものとしては、悪くない情報量だったと思っています。
おわりに¶
この記事は、途中で結論が2回変わりました。
最初は「損切りは正しく動いた」で締めるつもりでした。事実そうですし、そこだけ切り取れば格好がつきます。
次に台帳を見て、「出金の配管が壊れていた、直せばいい」に変えました。バグを見つけた話は、書いていて気持ちがいいものです。
でも、それも違いました。
過去の自分の検証記事を読み返して分かったのは、「1万円ごとに抜く」という作戦はすでに一度、採算が合わないと結論が出ていたということでした。手数料2,500円と、ボーナスの比例消失。手取り7,500円のために耐久力を18,243円削る取引を、私は正しく見送っていたのです。
つまり本当の結論は、こうです。
私は「いつ抜くか」を5ヶ月間考えていた。 正しい問いは「この器で、そもそも抜けるのか」だった。
固定費2,500円、無料ライン40万円。入金は5万円。この3つの数字を並べた瞬間に、「破綻前に利益を逃がす」という賭けが成立しないことは決まっていました。戦略の巧拙ではなく、算数です。
そして、抜くための資金と耐えるための資金が同じ財布だったことも、破綻して初めて数字で見えました。クレジットは損失の65%を吸収しています。抜いていれば、その耐久力を自分で削っていた。どちらを選んでも、この器では削られる側に回る設計でした。
失ったのは50,000円。金額としては授業料と呼べる範囲だと思っています。
ただ怖いのは、「破綻前提で利益を抜く」という言葉の響きが良すぎて、成立条件を一度も数字で確かめないまま5ヶ月動かしてしまったことのほうです。EAの設定値には、否定済みの作戦が生き残ったまま置かれていました。それが「この構造はある」という感覚を私に与え続けていました。
同じ構造は、たぶん他にもあります。次はそこを洗います。
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金額・約定価格はすべてリアル口座の約定履歴から取得したものです。反実仮想の再生は、実際の1分足と、当時保存されていた監視スコアを、実際に稼働している判定コードへ流し込んで実行しました。将来の結果を示すものではありません。