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10万円から始める「壊れても勝つ」マーチンゲールEA戦略

はじめに ― マーチンゲールは本当に「危険なだけ」なのか?

FXの自動売買で「マーチンゲール」と聞くと、多くのトレーダーが身構えるのではないでしょうか。「いつか口座が飛ぶ」「ギャンブル手法だ」という声は少なくありません。

ただ、自分なりに考えてみると、本当に危険なのは「無制限のマーチンゲール」であって、きちんと設計されたマーチンゲールであれば、話は違ってくるのではないかと思うようになりました。

今回は、10万円の資金から「口座が破綻しても利益が残る」という、ちょっと逆転の発想でマーチンゲールEAを設計してみた過程を、試行錯誤の思考プロセスとともに書いてみたいと思います。まだ検証段階ではありますが、この考え方自体に可能性を感じています。


第1章:まず「限界」を知りたい ― レベルテストEAの開発

発想の原点

マーチンゲール戦略の最大のリスクは「どこまでナンピンが続くか分からない」ことだと思います。であれば、まず限界を数値で把握してみればいいのではないでしょうか。

そこでまず作ったのが「レベルテストEA」です。マーチンゲールのレベル上限を事実上無制限(20レベル)に設定し、1年間のバックテストでどこまで到達するかを検証してみました。

検証パラメータ

項目 設定
基本ロット 0.01(固定・最小)
PIPステップ 20→40→80→160... (2倍ずつ拡大)
ロット倍率 1.5倍
レベル上限 20(事実上無制限)
通貨ペア USDJPY
期間 1年間

なぜPIPステップを「2倍ずつ」にしたのか

固定幅のPIPステップ(例えば全レベル20pips間隔)だと、レベルが深くなるほどリスクが急激に膨らんでしまいます。相場が一方向に動いている局面で、等間隔にナンピンを入れ続けるのは避けたいと思いました。

2倍ずつ拡大することで、こんな効果が期待できるのではないかと考えました:

  • レベル1→2:20pips — 小さな押し目で拾う
  • レベル2→3:40pips — 中程度の調整を待つ
  • レベル3→4:80pips — 大きな逆行でのみ追加

PIPステップを広げることで、深いレベルほどエントリーが慎重になり、無駄なナンピンを減らせるのではないかと思います。

検証結果から見えてきたこと

1年間のバックテストで326サイクルが発生し、以下の結果が得られました:

レベル 到達回数 割合 PIPステップ ロット
Level 1 326回 100.0% 0.010
Level 2 169回 51.8% 20 pips 0.015
Level 3 72回 22.1% 40 pips 0.022
Level 4 30回 9.2% 80 pips 0.034
Level 5 5回 1.5% 160 pips 0.051
Level 6 1回 0.3% 320 pips 0.076

最大到達はLevel 6ですが、これは年間でわずか1回でした。 Level 5以上は全サイクルの1.8%しかなく、Level 4到達は9.2%。 つまり、「4レベルで設計すれば、90%以上のサイクルはLevel 3以内で収まりそうだ」ということが見えてきました。

Level 5以上に到達するケースは非常に稀であり、仮にLevel 4で損切りしたとしても、それ以外の90%のサイクルで利益を積み上げていけるのではないかと考えました。ここから、最大4レベルのマーチンゲールシステムで設計してみようという方針が固まりました。


第2章:10万円で組む最適なパラメータを考える

制約の整理

  • 資金: 100,000円
  • ブローカー: XMTrading(レバレッジ1:1000)
  • ゼロカット: あり(追証なし)

レバレッジ1:1000のおかげで、証拠金はほぼ無視できます(0.01ロット = わずか150円)。つまり、考えるべきは「ドローダウン耐性」の1点に絞れそうです。

3つのプランを比較してみた

10万円で4レベルマーチンゲールを組む場合、いくつかのパターンをシミュレーションしてみました。

プランA:安定型(0.03ロット)

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L1: 0.03  L2: 0.04  L3: 0.06  L4: 0.10
合計ロット: 0.23 / L4到達時DD: 13,800円 / 余力: 360pips

かなり安全ですが、1回の利確で600円程度。月利が低く効率面ではもの足りません。

プランB:バランス型(0.05ロット)★採用

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L1: 0.05  L2: 0.07  L3: 0.11  L4: 0.16
合計ロット: 0.39 / L4到達時DD: 24,200円 / 余力: 179pips

L4到達時のドローダウンは24.2%、余力179pips。ドル円の日足ATR(80-100pips)を考えると、ある程度の余裕はありそうだと判断しました。

プランC:攻め型(0.07ロット)

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L1: 0.07  L2: 0.10  L3: 0.15  L4: 0.23
合計ロット: 0.55 / L4到達時DD: 33,800円 / 余力: 105pips

利益効率は魅力的ですが、L4到達時の余力が105pipsとやや心もとないです。大きなトレンドが発生した場合に耐えきれない可能性があります。

なぜプランBを選んだか

「最も多く稼げるプラン」ではなく、「L4に到達しても余裕を持って耐えられそうなプラン」を選びました。マーチンゲールは「生き残ること」が最優先だと考えています。生き残り続ければ、利益を回収するチャンスはいずれ来るはずです。


第3章:「動的テイクプロフィット」を試みる

通常のマーチンゲールEAは全レベルで同じTP(利確幅)を使うことが多いようです。しかし、ポジション数に応じてTPを変えた方が良いのではないかと考えました。

ポジション数 TP 考え方
1ポジ 30 pips 余裕があるので大きく狙いたい
2ポジ 25 pips やや絞る
3ポジ 20 pips 含み損があるので早めに回収したい
4ポジ 15 pips 最大リスク状態。できるだけ早く脱出したい

ポジションが増えるほどTPを狭くすることで、深いレベルからの脱出速度を上げられるのではないかと期待しています。4ポジション保有時は15pipsで利確するため、少しの反転でも全ポジションを一括決済できる設計にしてみました。


第4章:ハーストフィルター ― 「数学」でエントリーを制御してみる

ハースト指数とは

ハースト指数(H)は、時系列データがトレンド的か、レンジ的かを数値で判定する統計指標です。

  • H > 0.5: トレンド傾向(マーチンゲールには不利になりやすい)
  • H = 0.5: ランダムウォーク
  • H < 0.5: 平均回帰傾向(マーチンゲールに有利に働く可能性がある)

3段階のフィルターを設計してみました

フィルター ハースト閾値 判定
エントリー許可 H ≤ 0.48 レンジ相場と見なせる時だけ新規エントリー
ナンピン許可 H ≤ 0.70 弱いトレンドまではナンピン許可
緊急対応 H ≥ 0.80 強いトレンドの可能性が高いので緊急アクション

エントリーの閾値を0.48に設定することで、「レンジ相場の可能性が高い」と判定できる局面でのみトレードを開始します。これにより、トレンド相場での不利なエントリーをある程度削減できるのではないかと考えています。

緊急対応モード

ハースト指数が0.80を超え、それが3バー連続で続いた場合は、さすがに危険と判断して以下のいずれかのアクションを取るようにしました:

  1. ナンピン停止(デフォルト)— 新規ポジションの追加を停止し、反転を待つ
  2. 全決済 — 損失を確定して撤退する
  3. ヘッジ — 反対ポジションで両建てし、損失拡大を食い止める

第5章:「壊れても勝つ」利益抜き取り戦略 ― 一番伝えたいこと

発想の転換

通常、マーチンゲールの議論は「いかに口座を守るか」に集中しがちです。自分もずっとそう考えていました。しかし、ある時ふと逆の発想が浮かびました。

「口座が壊れる前に、利益を抜き取ってしまえばいいのでは?」

利益抜き取りシミュレーション

EAに仮想出金機能を組み込み、1万円の利益が出るたびに出金するシミュレーションを実施してみました。

バックテスト結果

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初期資金:         100,000円
累計出金:         120,000円(12回出金)
最終口座残高:     破綻(ゼロカット適用)

一見すると「口座が飛んだから失敗」に見えますよね。最初は自分もそう思いました。しかし、よく考えてみると現実のシナリオは違います:

項目 金額
出金済み(手元に確保) +120,000円 💰
口座への投入額 -100,000円
実質損益 +20,000円(+20%)

口座が破綻しても、出金した12万円は手元にあります。 ゼロカット制度のおかげで追証もありません。結果として、10万円の投資に対して2万円のプラスで終わることになります。

この考え方の核心

マーチンゲールには「いつか必ず破綻する」という弱点があります。これは確かにその通りだと思います。しかし、「破綻する前に元本以上を回収しておく」ことができれば、その弱点を逆手に取れるのではないかと考えました。

  • 従来の考え方:「口座が飛ばないように守る」→ いつか飛ぶ → 全損
  • 今回の考え方:「口座は飛んでもいい。その前に回収する」→ 飛んでも利益が残る可能性がある

もちろん、これはあくまで仮説であり、すべてのケースでうまくいくとは限りません。出金回数が十分に積み上がる前に口座が飛んでしまえば、当然マイナスになります。ただ、「壊れることを前提にした設計」という発想自体には、試してみる価値があるのではないかと感じています。


第6章:EA構成 ― 5つのバリエーション

今回の分析・開発プロセスで、目的別に少しずつ異なるEAを構築してみました。

EA 目的 特徴
012 レベル深度検証 上限20レベル、統計収集専用
013 本番(固定ロット) プランB、0.05ロット固定
014 本番(複利) 残高連動でロット自動調整
015 利益抜き取り検証 1万円単位の仮想出金シミュレーション

開発の流れ

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① 限界を知る(012: レベルテスト)
② 最適パラメータを考える(013: 固定ロット)
③ 成長性を加えてみる(014: 複利版)
④ リスク管理の新しい視点(015: 利益抜き取り版)

この「計測 → 設計 → 拡張 → 検証」というサイクルを回すことで、感覚ではなくデータに基づいた戦略を組み立てていけたのではないかと思います。完璧ではないかもしれませんが、少なくとも「なんとなく」で運用するよりは、ずっと良い判断ができるようになった実感があります。


第7章:1分足×ハースト0.48の組み合わせ

いくつかの設定を試した中で、現時点で最もパフォーマンスが良さそうだった組み合わせです:

パラメータ 設定値
時間足 M1(1分足)
ハースト閾値(エントリー) 0.48
基本ロット 0.05
PIPステップ 20→40→80
ロット倍率 1.5倍
最大レベル 4
バスケットSL 残高50%

なぜM1が有効に感じたか

1分足は値動きが細かく、短期的な反転が頻繁に起こります。マーチンゲール(ナンピン)は「価格が最終的に戻る」ことを前提とした手法なので、短期足ほど回帰しやすい特性が活かせるのではないかと考えています。

ハースト0.48と組み合わせることで、「レンジ相場 × 短期回帰」というマーチンゲールにとって有利と思われる条件でのみトレードが行われるようになっています。ただし、M1はスプレッド拡大やスリッページの影響を受けやすいので、そこは今後の課題として注意していきたいと思っています。


まとめ:マーチンゲールは「設計」で変わるかもしれない

マーチンゲール手法への批判は、パラメータが未設計のまま運用した場合に対する批判としてはまったく正しいと思います。

今回のアプローチでは:

  1. 限界を数値で把握してみて(レベルテスト)
  2. 資金に対して適切そうなロットを計算し(3プラン比較)
  3. 数学的フィルターでエントリーを制御する仕組みを入れ(ハースト指数)
  4. 「壊れても勝てる」可能性のある出口戦略を考えてみました(利益抜き取り)

マーチンゲールが「ギャンブル」のままなのか、それとも「定量的に設計されたリスク管理手法」になり得るのか。正直、まだ確信は持てていません。しかし、少なくともこうした検証と設計のプロセスを経ることで、「やみくもにやるマーチンゲール」とは全く別のものになっているのではないかと感じています。

これからも検証を続けながら、この戦略をブラッシュアップしていきたいと思います。


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⚠️ 免責事項: 本記事の内容は個人の研究・検証結果に基づく考察であり、投資助言ではありません。FX取引にはリスクが伴います。実際の運用は自己責任で行ってください。バックテスト結果は将来の成績を保証するものではありません。